From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
※僕がジーンズショップで働いていた頃、初めて英語のテキストを買って英会話を経験した時のエピソードの続きです。
ガチガチに固まっていた緊張がスーッと取れて、落ち着いてきた僕は、心臓の鼓動もゆっくりになってきました。
と同時に、さっきまで真っ白になっていた僕の頭の中も落ち着いてきて、これまでに覚えた接客英会話フレーズたちが次々と思い出されてきました。
よし!やれそうだ!
僕はやっと自分を取り戻しました。
ハードルを下げる
超初心者の自分にとって、いきなり英語で外国人のお客さんに話しかけていくのは、心理的なハードルが高いです。
「勢いよく話しかけていって、答えがまったく聞き取れなかったら、超カッコ悪いじゃん?」
という心の声が聞こえてきます。自分を批判する声の主は、いつも自分自身です。
そこで僕は、まずはできるだけ緊張しない場面で英語を使ってみることにしました。
自分の土俵で英語を使おう!自分の土俵に相手が入ってきたタイミングで英語を使う分には、おそらく大丈夫だ。
と思いました。ジーンズショップの店員の僕にとっての土俵は、「レジコーナー」です。
レジコーナーなら、声を出さずにはいられません。レジでは、最低3回は声に出すタイミングがあります。
買い物の合計金額を伝える時に、「○○円になります。」というセリフ。
そして、おつりを渡す時に、「○○円のおつりです。」というセリフ。
そして最後のお見送りをする時に、「ありがとうございました!またお越しくださいませ!」のセリフ。
計3回声を出します。このタイミングで英語を使えば良いじゃないか!と思いました。
緊張の一瞬!レジでの会話
そこで僕は、売り場を歩き回らずに、レジ付近をウロウロしながら様子をうかがいました。
すると、ジーンズやTシャツをたくさん抱えた米軍兵士たちが、ゾロゾロやってきました。
いよいよだ!!緊張の一瞬です!僕の心臓は再びバクバクし始めました。
最初にレジに並んだのは、顔がほっそりした、小柄な白人男性でした。こんなタイプの人も米軍にいるのかぁ~!新しい発見です。
この人は、他のムキムキ筋肉マン達より威圧感がなくて良い感じです。
僕は、ちょっとホッとしながら、商品に付いている値札のバーコードをひとつずつスキャンしていきました。
日本語では、商品をバーコードでスキャンする時は一点ごとに「○○円が一点。○○円が一点・・・」と読み上げていきます。
でも、さすがにその英語表現までは本には載っていませんでした。
そこで僕は仕方なく、何も言わずにバーコードをスキャンしていきました。
ピッ!ピッ!ピッ!
と、店内にスキャナーの音だけが響き渡りました。この沈黙が、また緊張します。
アルバイトの大学生の男子が、僕の横で袋詰めをしてくれているのですが、彼も外国人を前に緊張しているようで、無言でした。
僕も、スキャナーを持つ自分の手が小さく震えているのを感じました。あぁ、なんて自分は臆病者なんだ!
たったひと言ふた言ぐらい、英語でしゃべるだけだってのに・・・
いよいよ、トータル金額がレジに出ました。これを英語で読み上げればいいだけです。
でも、千円単位の数字を英語で言うのは大変です。沈黙の中でも、頭の中はフル回転しています。「え~と、千円は『サウザンド』で、百円は『ハンドレッド』だから・・・え~と・・・」と必死で僕は考えていました。
そして、ドキドキしながら読み上げました。
「ザ・トータル・イズ・スリー・サウザンド・ファイブ・ハンドレッド・シックスティースリー・エン」
自分でもビックリするぐらい小さい声でした。いつもアルバイトの大学生には「レジでは大きな声でハキハキと声を出してね!」なんて言っている自分が、こんなに小さい声になってしまうとは・・・
おそるおそる白人男性客の顔を見ました。すると、すごい笑顔になっています。
ぬぬっ!これはどういう笑顔だ?俺の声が小さくて英語の発音がダメダメだったからバカにしている笑顔か?それとも、俺が英語を話したことに喜んでいる笑顔か?
分かりません!そのまま僕は、緊張で小刻みに震える手でお金を受け取りました。
・・・つづく。
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