From 師範代Shinya(新村真也)
僕がカナダ留学前に聞いた情報。それは、「カナダは安全な国」だということでした。
アメリカのように銃を持っている人はいないし、警察官の数が多いので、犯罪発生率も少ないと言われています。
でもそれは、あくまで「世界レベル」での話です。日本と比べてはいけません。海外に行くと、日本は本当に治安のいい国だということを実感します。
僕は、実際にカナダで生活をしてみて、驚くことがいくつもありました・・・
警察官の数
たしかに、警察のパトカーの数は多いです。それは日本で得た情報通りでした。
街の通りを歩いていても、しょっちゅうパトカーを見かけます。(パトカーの色やデザインもカッコいいです)
いざとなったら、パトカーに助けを求めることができるという安心感がありました。
でも逆に言えば、「それだけの数のパトカーが必要」という考え方もできます。
コンビニ前のホームレス
僕が通うダウンタウンの学校の通り道には、コンビニがいくつかありました。
コンビニの出入り口には、ホームレスの「物乞い」が昼間から列をなして座っています。こんな光景は、日本では見たことありません!
そして、店から出てきたお客さんの目の前に、小さな汚れた段ボール箱を差し出しながら、しゃがれた声で「釣り銭をくれ!」と言ってくるのです。
ほとんどの人は無視していましたが、中には小銭をあげている人もいました。
この「物乞い」は、実際やられてみると分かりますが、けっこう怖いです!
真っ白になった髪とヒゲを長く生やし、鼻水をダラーンとたらして目がうつろになったおじいさんが、いきなり話しかけてくるのです。
おじいさんの見た目はまさに、「ゾンビ」でした。まさに「バイオハザード」の世界に入り込んだ気分でした。
日本のホームレスの人たちとは全く違う雰囲気で、どうやら麻薬中毒などで脳がやられてしまった人も多そうな感じがしました。
店の前で物乞いをしても、店員さんは彼らを追い払うことはしません。
パトカーもすぐそばに止まっているのに、警察官も彼らを捕まえたり追い払うことはしません。
コンビニ前でのホームレスの物乞いは、法律的にOKなのか?
僕は衝撃を受けました・・・
さらに衝撃的だったのは、女性のホームレスがけっこう多いことでした。日本ではあまり女性のホームレスは見かけないので、これも大きなカルチャーショックでした・・・
バス停で出会ったヤバい男
ある日、僕は学校帰りにバス停でバスを待っていました。いつもはクラスメイトと一緒に帰ったり、ちょっと街を歩いたりしてから帰るのですが、この日は体調が良くなかったので、まっすぐ家に帰ることにしました。
僕は、いつものバス停とは違う、一本近いバス停から乗ることにしました。
僕の前には、若い白人男性がひとり待っていました。彼が先頭です。その次が僕。そして、僕のうしろに白人女性が1人。そのうしろにアジア系男性がひとり。トータル4人です。
僕の前にいる若い白人男性は、ポケットに手を突っ込みながら、落ち着きのない感じで身体を上下左右にユラユラ動かしています。そして、ぶつぶつ独り言を言っています。
「う・・・なんか、ヤバそうなやつだな・・・日本のヤンキーみたいな感じか?」
そこへバスがやってきました。バス停に止まったあと、運転手さんが鋭い視線で僕らの方を見ました。
カナダの運転手さんは、身体が大きくてバーの用心棒みたくイカツい雰囲気の人が多いです。
バスは僕らの前に止まっていますが、ドアが開きません。
あれ?どうしたんだろう?いつもは止まって数秒で開くのにな・・・
僕の前の若い白人男性が、イライラした感じで扉の前で小刻みに動いています。
次の瞬間、運転手さんは首を横に振りました。そして、そのままバスを発車させたのです!!
えーーー???
あっけに取られていると、僕の前にいた白人男性が突然、大きな声で叫びました。
「ファックユー!!」(クソ野郎!!)
そして、バスの扉を全力で蹴り飛ばしました!
ドン!!と大きな音がして、バスの扉が揺れました。でも扉はかなり頑丈で、壊れる気配はありません。
運転手さんはお構いなしに、そのままふつうに走り去ろうとしました。
怒り狂った男は、ダッシュでバスを追いかけ、バスのうしろの部分にジャンプキックを食らわせました!!
ドン!と鈍い音がして、男はそのまま地面に転んで倒れました。そのままバスは走り去りました。
あっけに取られていた僕は、ようやく何が起きたのか分かりました。どうやら、バスの運転手さんは彼を危険人物と判断し、乗車拒否をしたようなのです。
あの落ち着きのなさと、バスを追いかけてジャンプキックまで喰らわすほどの攻撃性は、麻薬中毒者かもしれません。
ふと後ろを見ると、さっきまで僕の後ろに並んでいた2人はいません!いつの間にかずっと遠くを歩いています。
あっ!逃げ足が速い!
すると、道路に倒れていた男はむくっと起きあがると、顔を真っ赤にしながら、怒り狂って僕の方に向かってきました。
な!なんだ?俺に八つ当たりする気か?
僕の身体にはアドレナリンが走り、心臓の鼓動が速くなりました。そして頭の中は一気に高速回転し始めました。
まさか、ここでストリートファイトになるのか?
麻薬中毒者は、銃で撃っても倒れないって聞くぞ!素手で倒せるのか?
麻薬中毒者は、銃で撃っても倒れないって聞くぞ!素手で倒せるのか?
いやいや、どっちにしても、戦ったら俺も捕まっちまうじゃないかー!!そしたら日本に強制送還?いやまだカナダでやりたいことがたくさん残ってるぞ!
「正当防衛」って、英語で何て言うんだろう?
はっ!そんなこと考えてるヒマがあったら、逃げなければ!!
そんなことを考えているうちに、男は僕にズンズン近づいてきました。
顔を真っ赤にしてつばを飛ばしながら、怒鳴っています。どうやら内容は、「ふざけんな!あのクソ運転手め!」みたいなことを言っているようです。
そして、「おい、見たか?あれ!差別だよな!これは!!」と、僕に同意を求めているようでした。
僕はよくわからないまま、うなずきました。
「俺は何もしてないのに!なんでバスに乗れないんだ?こんな理不尽なことがあるか!」
みたいなことをわめいています。どうやら、僕に共感して欲しいようです。
でも、僕は何て返事をしていいかわかりません。いろんな英語の共感フレーズが頭の中をグルグル回っていますが、この極端な状況で使えそうなものはありません。
ここで、「私はあなたに賛成します」なんて言わないよなぁ・・・いや、そもそも賛成じゃないし・・・悪いのはおまえやろ!
返す言葉をいろいろ考えているうちに、一言もしゃべれなくなりました。
そのうち彼は、僕が「まだ英語ができないアジア系留学生」だと思ったらしく、ひととおり怒鳴り散らした後に、自分からその場を去っていきました。
歩きながらそこら辺にあるゴミ箱とか、いろんなものを蹴り飛ばしていきました。
ふぅ~!危なかった・・・
こういう緊急の時は、なかなか英単語が出てきません。
でも今回は、逆に英語が出てこなかったことで、相手を刺激することなく危機を脱することができました。
ここで下手に返事をしていたら、火に油を注ぐ結果になっていたかもしれません・・・
「本当にカナダは、治安の良い国なのか?」そう思いながら、僕はバス停を後にしました。
でも、今日お話したことは、みんな昼間の明るい時間帯の出来事です。
その後、僕はさらに恐怖を感じる体験をすることになろうとは、この時には思いもしませんでした・・・
・・・つづく。
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