サルサダンス上級者の男性Dさんを相手に、僕は「女性役」の踊りを体験させてもらえることになりました。
先生と生徒全員が見守る中、僕はDさんと一緒にスタジオの中央に移動しました。
Dさん:「とりあえず何からやる?」
僕:「そうですね。僕が今まで習ったことがあるのは、突然離れたり近づいたりする動きと、ターンの2つです。」
Dさん:「OK!じゃあ、その2つをやってみるか。」
先生:「じゃあ、雰囲気を出すために音楽もかけてあげよう!」
僕:「ありがとうございます!」
先生が音楽をかけると、Dさんは軽快にステップを踏み始めました。
僕は女性側なので、いつもと逆のステップを踏まなければなりません。
でも僕はそもそも、普段からサルサ音楽のリズムがつかめずに、ステップのタイミングがガタガタなので、あまり気にせず適当にDさんに合わせて前後に動きました。
リードされる感覚
しばらくすると、Dさんは突然、ポン!と僕の身体を軽く後ろに押しました。
どこをどう押したのか分かりません。
でも、とにかく僕は軽く押された感覚があったのです。
すると、なぜか不思議なことに、僕の身体はハイスピードで一気に後ろに飛ばされました。
そして、Dさんの顔が一気に遠くに行き、小さくなっていきました。
お互いの片手同士だけがつながった状態で、バネのように弾かれて遠く離れました。
腕が伸びきった瞬間、Dさんはつながった手の指にグイッと力を入れて、僕を引き寄せました。
すると僕の身体はまた自然に動いて、一気にDさんに引きせられていきました。
「うぉーーー!!」
僕は思わず声が漏れてしまいました。
驚いて先生の顔を見ると、先生はニヤニヤしながら、
「女性側の感覚が分かった?楽しいでしょ?」
というメッセージを含んだ表情をしていました。
Dさんはしばらくステップを踏んだ後、また同じ動きを何度か繰り返してくれました。
Dさんに突き放されて戻されるたびに重力を感じて、ブランコに乗っている時のような感覚になりました。
僕が女性と踊ってリードしている時とは全然違います。
自分がリードしている時との違い
僕が踊っている時には、「今から離れましょうね」という合図を相手女性に送っているだけです。
そして、お互いの協力のもと、離れたり戻ったりを繰り返している感じがします。
おそらく、僕とペアを組んだ女性側も同じように感じていたと思います。
でも、Dさんのリードは違います。
僕の身体は、Dさんのリードで自動的に動かされているような感覚でした。
Dさんと自分のリード技術の差に悔しさを感じるヒマはありませんでした。
それよりも、Dさんの圧倒的な技術力の前で、僕は気持ち良くさせられてしまいました。
ターンも自然に!
最初はイヤがっていたDさんも、僕の大きなリアクションを見て楽しくなってきたようで、ニヤニヤしながら言いました。
Dさん:「次はターン行くか!」
僕:「はい!お願いします!」
するとDさんは、僕の片手を回しながら、ターンさせる動きをしました。
この動きは、僕がこれまで何度も習ってきた動きです。
すると、僕の身体はまた自然に動いて、クルッと軽快にターンしました。
その時の感覚が、とても不思議でした。
「自分の意志とは無関係に」ターンしてしまう感じがしたのです。
これがとても気持ちいいのです!
ターンの動き自体は、HIPHOPダンスでもよく行われます。
それに僕は、ジャズダンスも習ったことがあるので、連続してキレイなフォームでターンし続ける訓練も受けました。
だから、ターンする感覚には慣れているつもりでした。
でも、サルサダンスのターンはまったく違いました。
リードされてターンするのと、自分の意志でターンするのはやっぱり違います。
しかも、Dさんにリードされると、勝手に身体がクルッと回ってしまうのです!
この感覚がすごく不思議でした。
おそらく、Dさんの手にかかれば、サルサ初心者の女性でも、華麗にターンできてしまうでしょう。
(これがサルサ上級者のリード技術か!)
僕は踊らされながらそう思いました。
Dさんに何度もクルクルと回されるたびに、不思議な気持ちを味わいました。
僕はこれまで男性側の練習をしてきましたが、まったく同じ動きをしていても、男性側と女性側でこんなに感覚が違うのか!と驚きました。
女性側は、男性にコントロールされている感があります。
でも、それは「自分の意志に反して強制的にやらされる」という感覚ではありません。
自分の身体が自然に動いてしまうのです。
男性側はそのきっかけを作っているに過ぎません。
これがけっこう気持ち良いのです。
「男性に身をゆだねる気持ちよさ」と言って良いかもしれません。
まったく同じ動きをしていても、男女で立場が変わるだけで、こんなに感覚が変わるとは思いませんでした。
女性に人気な理由
HIPHOPダンスでは味わったことがない初めての感覚に、僕は衝撃を受けました。
これなら、サルサダンスに女性生徒が多い理由がうなずけます。
男性側は、初心者のうちは頭をフル回転させながら女性に送るリードサインを考え続けなければなりません。
そして相手の女性も初心者の場合、自分が上手にリードできないと、お互いの動きがぎこちなくなってしまいます。
一方で女性側は、自分が初心者であってもリードが上手な男性と踊れば、スムーズに動けることが分かりました。
僕:「いやー!これは気持ちいいっす!女性側ヤバいっす!」
僕は大きな声で叫んでしまいました。
僕らを見ていた先生とクラスメイトたちから笑いが起きました。
すると、Dさんはさらに乗ってきたようで、
Dさん:「よ~し!じゃあ、もっとスゲーやついっちゃう?」
と言ってきました。
僕:「もっとスゴいのがあるんですか?ぜひ味わってみたいっす!」
そこから先には、さらにサルサの快感の世界が待っていました。
・・・つづく。(→この記事のシリーズを1話目から読む)
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From 師範代Shinya(新村真也)
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