From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
先日、東京で行われた「Love Conference」というセミナーに参加した体験談の続きです。
今回のセミナー講師は、アメリカを代表する作家でセミナー講師のジャネット・アットウッドさんと、デポラ・ポーネマンさんでした。
2人ともアメリカ人なので、当然、英語しか話せません。
海外出身の講師が日本でセミナーをやる時には、同時通訳が付きます。
今回のセミナーにも、2人の同時通訳の方が20分交代で通訳していました。
僕の楽しみの1つは、この「同時通訳を聞くこと」です。セミナー講師の話す英語と、日本語通訳者の話す日本語を聞き比べて楽しむのです。
僕の聞き方
今回のセミナーでも、一緒に参加した妻にこんなことを聞かれました。
「シンヤはセミナーの最中に、英語と日本語、どっちを聞いてるの?」
この質問は、たまに生徒さんにもされることがあります。
先ほど僕は、「セミナー講師の話す英語と、日本語通訳者の話す日本語を聞き比べて楽しむ」とお伝えしました。
でも実は、常に日本語と英語を両方聞いているわけではありません。
なぜなら、疲れてしまうからです。
英語なら英語だけの方が、ずっと聞きやすいです。
日本語と英語はまったく違う脳の部分を使う感覚なので、同時に入ってくると、けっこう混乱します。
同時通訳の方が20分で交代しているように、英語と日本語訳を同時に聞き続ける作業は、20分くらいが限界です。
難易度的には、こんな順番です。(やさしい順)
↓↓↓
レベル①日本語だけで聞く
レベル②英語だけで聞く
レベル③英語と日本語を同時に聞く
一番難しいのは、レベル③の同時進行です。
また、今回のように丸一日かけてやるロングセミナーの場合は、「②英語だけで聞く」というのも、かなりキツいです。
僕がスーパーサイヤ人でいられる限界時間は、半日ぐらいだからです。
なので、僕は今回のセミナーは、こんな感じで聞きました。
①英語だけに集中して聞く。
②たまに同時通訳の日本語と聞き比べて楽しむ。
③英語脳をオフにして、日本語訳だけ聞きながら休む。
という感じです。この①~③のステップを繰り返します。
同時通訳の神業!
今回、僕が驚いたのは、「同時通訳のスピードの速さ」です。
英語で行われるセミナーの多くは、
①講師が英語の文を言い終わる
↓↓↓
②日本語訳が入る
という2ステップです。
でも今回は、
「講師が話し始めるとすぐに日本語訳が始まる」
という感じでした。
とにかく、スピードが速いのです!
その分、タイムラグが少なくて、セミナーがサクサク進みました。
ふだん英語のトレーニングをやっているあなたには分かると思いますが、英語と日本語は語順がまったく逆です。
なので、同時進行で通訳していくことは、本来は不可能なのです。
その不可能なことを可能にしているのが、今回の同時通訳者の2人でした!!
どれだけスゴいのか?
このスゴさを分かりやすくお伝えするために、文章をシンプルにしてみます。
まず、これが英語の語順です。
↓↓↓
I like English.
対して、日本語はこの語順です。
↓↓↓
私は 英語が 好きです。
動詞&目的語の位置が真逆です。
こうして短い文章で見ると、そんなに違いは感じないかもしれませんが、これが長い文章になってくると、英語の語順のまま訳すと、日本語がわかりづらくなることがあります。
たとえば、
I don’t think it’s difficult to love yourself.
を英語の語順で直訳すると、
私は思いません。それが難しいとは。あなた自身を愛することは。
という日本語になります。これでは、分かりづらいですよね?
でも、今回の通訳さんは、
I don’t think it’s difficult to love yourself.
私は、自分自身を愛することは難しいとは思っていません。
という風に自然な日本語で訳していたのです!しかも、ほぼ同時進行で!
なぜそれが可能になるのか?
なぜ、そんなことが可能になるのでしょうか?
今回のセミナーでは、昼休みの時間に2人の同時通訳のうちの一人、Yuiさんにお話を聞くことができました。
ご本人の許可を得て内容をシェアしますね。
なぜ、英語と日本語の同時通訳が可能になるのか?をYuiさんに聞いてみたところ、面白い答えが返ってきました。
基本的には、同時通訳はほぼ「予測」しながらやっているそうです。
つまり、これまでの話の流れや声のトーン、講師の性格、口元の動きなど、目で見える情報や見えない情報まで駆使しながら、次に出てくる言葉を予測して日本語にしているというのです!!
これは、マジでスゴいです!!神業です!!
もちろん、たまに予測が外れて、
「え~!そっち~?」
と思うこともあるそうです。
でも、そういう時には、日本語をうまくごかましながらやっているそうです(笑)
勇気と経験
僕は今回のYuiさんの話を聞いて、「同時通訳は、勇気と経験がいる仕事だな」と思いました。
一番安全なのは、講師が1文全部を話し終わってから、ワンテンポ遅れて通訳することです。
でも、そのタイムラグをなくして同時に通訳するためには、「話の着地点を予測」して、そこに向かって「エイヤッ!」と先に訳してしまうという、「ミスを恐れない勇気」が必要になります。
そして、自分の予測の確率を上げるためには、そもそもの経験値を積み上げて勘を研ぎ澄ませていくしかない、と思いました。
今回のセミナーの同時通訳も、とても楽しみながら聞くことができました。
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