From 師範代Shinya(新村真也)
(※僕が英会話スクール講師に転職してからの体験談です)
(→前回のつづき)
僕が受け持つことになった大学受験対策クラスでのできごと。
生まれて初めて大学受験の「赤本」を解いてみた僕は、衝撃を受けました!
当時、TOEIC900点&英検準1級を持っていた僕でさえ見たことも聞いたこともないような表現があったのです。
特に驚いたのは、ボキャブラリー問題でした。詳しい例文は忘れてしまったのですが、ネイティブの同僚に問題文を見せたところ、
「こんな言い回しは、現代人はもう使わないよ。この表現を使ってたのは、俺のひいおじいちゃんまでだと思う。少なくとも、俺は生まれてから一度も使ったことはない。」
と言われました。
その後、詳しく聞いてみたところ、おそらく日本語で言うところの、
「~ござる」とか、「拙者」みたいな昔言葉のようです。
それを大学受験の問題にしてしまうとは・・・(笑)
もし僕ら日本人が、アメリカの大学の日本語学部(そんなの学部があるのか分かりませんが)の入試問題を見たとき、
Q:次の( )に入る語句を答えよ。拙者は、忍者で( )。A:ござB:ござるC:ござりる
みたいな問題を見つけたら、きっとマイケルみたいに笑ってしまうと思います。
「こんなボキャ覚えたところで、いつ使うんだ?」
「おそらくナマの会話の中では、聞くシーンもしゃべるシーンもないよ!」
「それよりも、『私の名前はトムです。』みたいな、もっと実用的な表現を覚えようよ。」
と思うでしょう。
きっと、この問題文を見たマイケルも、そんな気持ちだったに違いありません。
でも、僕が衝撃を受けたのは、これだけではありませんでした。
和訳問題
僕が一番苦戦したのは、「和訳問題」でした。英語を読んで、日本語に翻訳する問題です。
しかも、和訳のパートは、かなり複雑な構文を使っている場所が多く、そのまま日本語にしても、意味が通じづらいものが多いのです。
なので、かなりの「意訳」が必要になります。
「意訳」って何?
「意訳」というのは、「意味が通じやすいように、日本語として自然な文章に訳すこと」です。
たとえば、
Oh my God!
をそのまま訳すと、
「おぉ!神よ!」
になります。
でも、僕たち日本人には、「おぉ!神よ!」なんて叫ぶ習慣はありません。
なので、前後の文脈を見ながら、「どんな状況でこの言葉を叫んだのか?」を確認します。
その状況に応じて、
「ビックリしたぁ~!!」
「やっちまったー!!」
「うぉー!!最高だぜ!!」
みたいな訳を当てはめていきます。
これが「意訳」です。
日本語の方が難しい
ちなみに、日本語は世界中の言語の中でも「最も難しい言葉」のジャンルに入ると言われています。
特に書き言葉は、「ひらがな」「カタカナ」「漢字」と、3種類もあります。
その3種類をバランスよく混ぜ込みながら文章を作るのは、海外の日本語学習者にとってはかなりの難易度の高さです。
文法も、並べる順番だけではなく、「て」「を」「に」「は」を駆使していかなければなりません。
日本語のネイティブの日本人でさえ、「本当に正しい日本語」を使える人は少ないくらいです。
つまり、受験英語の「和訳問題」というのは、
「ただでさえ難しい英文を、日本人でさえ正しく使いこなすのが難しい『正しく美しい日本語』に変える」
という、ウルトラC級の超難しい作業なのです!
時間がかかる
和訳問題は、解くのに時間がかかります。英語と日本語を行ったり来たりして、順番を入れ替えたりしながら、最終的に美しい日本語に直す必要があります。
しかも、大学受験の英文は学術的な内容が多いので、日本語の訳も同じ雰囲気で合わせる必要があります。
たとえ文法的に正しい日本語でも、文章全体の雰囲気にマッチした表現になっていなければ、減点されてしまうかも知れません。
たとえば、こんな例文があるとします。
政府は閣議で承認された○○年度のエネルギー白書の中で、日本のエネルギー供給全体に対する再生可能エネルギーの割合は、再生可能エネルギーの利用を促進しているドイツやスペインでの割合に匹敵する、と述べている。
この中の下線部が英語だったとして、そこを和訳したときに、
政府は閣議で承認された○○年度のエネルギー白書の中で、日本のエネルギー供給全体に対する再生可能エネルギーの割合は、再生可能エネルギーを使ってね、とオススメしているドイツやスペインの割合とだいたい同じくらいだよ、と述べている。
みたいに、急にカジュアルな響きの文章で和訳したら、おそらく減点になるでしょう。
ちゃんと文章全体の「お堅いトーン」に合わせてやる必要があります。
こういった「微調整」は、ものすごく時間がかかります。
これは、今までTOEICなどの実用英語試験の中で、「英語を英語の語順のまま理解しながらスピーディーに問題を解いていくスタイル」に慣れていた僕にとっては、かなりの違和感がありました。
ゴールが変わらなければ・・・
試験問題で点を稼いで合格することが受験生のゴールである以上、そのための勉強法もそこに合わせたものになるのは当然です。
ゴールの試験問題が、時間をかけてやる「和訳」やマニアックなボキャブラリー(~ござる、みたいな)なら、高校の授業で教える内容も、同じように時間をかけてやる和訳や、マニアックなボキャブラリーになっていまいがちです。
実用英語VS受験英語
今まで実用英語一本でやってきた僕にとって、受験英語は未知の世界でした。
でも、実際に過去問を解いてみると、それなりには正解できました。
一応、合格点を取ることはできましたが、さすがに全問正解はできませんでした。
さあ、問題はここからです。
僕はこれを、クラスで高校生に教えなければならないのです!
・・・つづく。
コメントを残す