From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
※僕が20才の頃、「鉄工場の作業員」から、「アクション俳優」に転職しようと決めて、「俳優養成所」に入った時のストーリーの続きです。
僕がタレントスクールに入って最初の3ヶ月で受けた3種類の訓練、
①感情コントロール訓練
②発声法&呼吸法
③滑舌とイントネーション
のうち、前回は①の部分の体験談を詳しくお伝えしました。
今回は、②の体験談をお伝えします。
実は、僕が20才の時に学んだ、この②と③が、8年後に学び始めた英語の発音に大きな影響を与えました。
②発声法&呼吸法
クラス内では、とにかく大きな声を出す練習をしました。
大きな声と言っても、怒鳴るわけではなく、「ふつうに聞こえるけど良く通る声」を出す練習です。
日常生活をしていると、「大きな声を出す」というシーンはほとんどありません。特に日本では、学校でプレゼンやディベートの練習をしないので、人前で大きな声で話すことに慣れていません。
特に僕の場合は、鉄工場で旋盤の仕事をしていたので、機械の前に立ち続けて、ひと言もしゃべらずに1日が終わることがよくありました。
唯一、仕事中のコミュニケーションと言えば、「コワモテの親方に怒鳴られる」という状況でした。
親方のお説教の最中に口ごたえすると、怒りの炎に油を注ぐことになります。
僕は口を開かずに、ひたすら黙って聞く、という作業に徹していました。
そんな状況だったので、僕が口を開くシーンはほとんどありませんでした。
そんな日常を過ごしてきた僕にとって、演技のクラスでの発声法は刺激的でした。
発声法の先生は、身体が大きな50代ぐらいの男性で、茶髪というより金髪に近い、パーマのかかった長髪をしていました。
こんなファンキーな外見をした50代男性は、僕は人生で初めて見ました。
「やっぱり、芸能界で生きている人は違うなぁ~!」
と思いました。
先生は声も大きくて良く通るので、クラスに入ってくると、ものすごい存在感を放っていました。
その先生から、「今自分の持てるマックスパワーの声を出してみなさい」と言われるのです。
でも、当然最初は声が出ません。ふだんやっていないことをいきなりやろうとしても、身体がついていかないのです。
それは他のメンバーも同じようでした。
マックスパワー状態に慣れる
そこで先生が言いました。
先生:「ふだんやっていないことをいきなりやろうとしても、できないことが分かったかい?」
みんな苦笑いしながらうなずきました。
先生:「これから毎日、今みたくマックスパワーで声を出す時間を10分間、取るといいよ。だんだん出せる声の上限が上がってくるから。」
僕はそれを聞いて、「あ、空手と一緒だな!」と思いました。
空手も、ふだん家でマックスパワーで練習していないと、いざ道場で組み手練習!となった時に、身体が動かないのです。
「1日の中でマックスパワーを出す時間を作って、それの状態に慣れていく」
というアドバイスは、とてもしっくり来ました。
ドラゴンボールで言えば、悟空と悟飯が「精神と時の部屋」に入って修行した時、「スーパーサイヤ人状態が普通」というところまでもっていったのと同じ感覚です。
腹式呼吸
マックスパワーを引き上げる手段として、そのファンキーな先生が教えてくれたのは、「腹式呼吸」でした。
先生:「日本人は呼吸が浅いから、腹の底から声を出すのが苦手なんだ。今さっきも、途中で息が続かなくなった人は多いでしょ?」
確かに!僕も途中で息が続かなくなりました。
先生:「舞台で大きな声でセリフをしゃべる役者さんは、全員『腹式呼吸』をマスターしているんだ。今から、みんなにも今日から腹式呼吸ができるようになる
方法を教えるよ。」
おぉ!それは嬉しい!!
先生:「まず、全員床の上に仰向けになって寝転んでみて。」
みんな寝転びました。
先生:「その状態で、お腹に手を当ててみて。大きく動いてるでしょ?」
本当だ!たしかに、息を吸うとお腹が大きく盛り上がって、息を吐くとヘコんでいる。
先生:「人間は、寝転がった状態で息をすると、自然に腹式呼吸ができるんだ。だから、まずは寝転がって声を出す練習をするといいよ。じゃあ、そのままさっきと同じように、大きな声を出してみて。まずは大きく息を吸い込んで・・・一気に吐きながら声を出して!」
次の瞬間、40人がいっせいに声を出しました。教室内が揺れるぐらいの大きな声が響き渡りました。
おぉ!!違う!明らかに、さっきよりも大きな声が出ている!!
僕は、腹式呼吸の威力を知って、テンションが上がりました。
・・・つづく。
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