From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
※僕が20才の頃、「アクション俳優になろう!」と決めて、「俳優養成所」に入った時のストーリーの続きです。
無口で超イケメンの、ダパンプ・イッサ先生(似てるだけで本人ではありません)の「ストリートダンスレッスン」が始まりました。
イッサ先生は何も言わずに、僕らに自分のマネをするようにジェスチャーで合図を送ると、リズム取りを始めました。
ダンスのレッスンはふつう、
①リズム取り
②ストレッチ
③振り付け
④クールダウン
という流れで進んでいきます。
①リズム取りは、音楽に合わせてヒザを軽く曲げ伸ばししたり、首だけうなずいたり、肩を上げ下げしたりします。
身体の一部パーツだけを軽めに動かすことで、身体を少しずつ温めていきます。
音楽に合わせて小さな動きを繰り返すことで、リズム感を養うことができるのです。
そうやって身体がだんだん温まってきたら、身体を大きく動かしながらストレッチをします。
前屈したり、開脚したりして、全身のスジを伸ばしていきます。
この①と②だけで、15分ぐらいは使うのが普通です。
その後、③の振り付けで曲にピッタリ合った1分~2分ぐらいの動きを練習します。
イッサ先生のウォーミングアップ
いつもの慣れたはずのウォーミングアップも、先生と音楽が違うとまったく違った雰囲気になります。
イッサ先生のウォーミングアップは、なぜかすごくカッコ良く見えました。
まず、音楽が力強いビートを刻むので、それだけでテンションが上がります。
さらに、その力強いイメージに合う動きをイッサ先生がするのです。
これまでのジャズダンスの先生の動きは、手の指先1本1本までしっかりコントロールして、しなやかに美しく見せる感じでした。
対してイッサ先生の動きは、手先はダランと脱力した状態で、主に肩を激しく動かしてリズムを刻む感じの動きです。
ちょっとした動きがカッコいい
イッサ先生のお手本は、本当にちょっとした動きでもカッコ良く見えました。
ただ肩を動かしているだけなのに、めちゃくちゃカッコよく見えるのです。
同じようにマネしようと思っても、鏡に映った自分の姿はまったく違って見えます。
「型」のない世界
これは後から知ったのですが、ストリートダンスには決まった「型」がありません。
「こうしなければダメ」
「これが正しい」
という型が決められているわけではなく、
「カッコ良く見えたら、それでいい」
という考え方なのです。それが、自由を重んじる文化から生まれたストリートダンスの価値観です。
イッサ先生は、この自由さとカッコ良さを全身で表現しているように見えました。
衝撃の振り付け
ウォーミングアップが終わると、イッサ先生の振り付けタイムが始まりました。
振り付けたタイムは音楽を使わずに、ゆっくり動きながら先生がお手本を見せて、僕ら生徒たちはそれをマネします。
ふつうは、先生が「ワン、ツー、スリー、フォー、」と大きな声でカウントを数えながら教えるのですが、イッサ先生はひと言も声を出しません。
ただ、無言でゆっくり動くだけです。
イッサ先生振り付けを見て、これまでとはまったく違った動きに僕は驚きました。
1つ1つのポーズがカッコいいのです!
「こんな動き、見たことない!」
というような動きをイッサ先生がしていきます。
僕らはそれに合わせてマネして動きます。
僕がこれまで学んできた武道の型とも違います。
ジャズダンスの型とも違います。
言葉で言い表せないほど、力強くて非日常的でカッコいい動きなのです。
人間の身体は同じ形をしているのに、取るポーズや動きの違いによって、こんなに見た目の印象が変わるのか!
と改めて思いました。
今まで一度もしたことがないポーズなので、めちゃくちゃ難しく感じます。
イッサ先生のマネをしても、鏡に映った自分の姿はまったく違って見えます。カッコ悪いです。
何が違うんだ?
そう感じながら、必死でついていきました。
身体の動きひとつで、こんなに印象を変えられるとは・・・ダンスって何て奥が深いんだ!と僕は衝撃を受けました。
・・・つづく。
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